素朴な疑問に向き合う遊び場:実験工房

秋学期電磁気学入門を終えて

・挨拶

 大学の後期は既に終わり、学び納めをした多くの教学の学生が帰郷した今日であると思われますが、皆さんどのようにお過ごしでしょうか。ある人は、厳しい冬季が過ぎさり、いよいよ春の訪れを感じさせる朝日の温かい輝きと比良山系を覆いつくす喬木の生命のアロマが自然の息吹をもたらそうとしている季節の移り替わりに感激の涙を洩らし、ある方は、2025年3月5日の早朝に発表される後期講義の成績評価に一抹の不安を覚えているのではないでしょうか。かく言う私は、初めて見たディズニー屈指の名作である塔の上のラプンツェルのその完成度の高さにひどく感動を覚えていました。詰まるところ、個々の過ごし方なんて三者三様と言ったところなのではないでしょうか。

 そんな前置きはさておき、今回は物理実験にまつわるBlogになっていますので、低回生の皆さんは最後までご覧になっていただければ、わが意を得たといったところでしょうか。

・電磁気学入門について

 2024年度後期の授業である電磁気学入門が遂に終了しました。分からない方のため向けに、本授業の概要として、電磁気入門は主に理工学部物理科学科1年生(加えて、他の理工学部の学科の生徒も受講できる)を対象にした基礎専門科目であります。特徴として、電磁気学の前段階としての位置づけであり、初歩的かつ少し前までは高校生であった大学1年生がわかりやすいような内容を主とする科目です。前年までの電磁気入門と異なる点として、今年の本講義は実験と座学のサラブレッドという大学の講義の中でも珍しい授業の一つでありました。

・講義を終えて

 そんな電磁気学入門でありますが、生徒と一緒に授業を受けていた私が感じた気付きとして、本講義の出席率の高さが挙げられます。勿論、本講義では、成績評価として出席を重視するコミュニケーションペーパー方式の授業形式が、出席率の高さに貢献していたことは否めません。しかしながら、そのにぎやかさ故に、本講義に出席されていた多くの受講者の方々は重々承知の通り、毎回のように行われていた担当教員の実験実演に多くのファンが生まれていました。そして、その実演を楽しみに毎回の講義に出席されていた受講者の方々が多少少なかれ存在していたことを私は知っています。実際に、幾分かの受講生は講義終了後に担当教員に実験道具を見せてもらおうとしていましたから。

 彼らの実験実演の多くは、当然、講義に関連した現象であり、低回生に分かりやすく見てもらうために、事前の原理や物理的意味など丁寧に伝えてくださっていました。そのような彼らに対して、あなた達はエンターテイナーとして観客の心をあるがままに鷲掴みにするライラックの夢路を演じた宝塚歌劇団のスターとは違う存在であると如何に言え得るのでしょうか。もしくは、悲しみを抱いているが、素敵な明日を願っている私たちをこれでもかと気にかけ、愛してくれる国民的スター、ミスチルの桜井さんとどう違うと言えるのでしょうか。やはり、担当教員の方々はひどく素晴らしいと感心します。

 とはいえ、少しばかしの欠点があったとすれば、それはやはり講義自体や実験ではなくコミュニケーションペーパーに魅せられてしまった受講生が多くいたことでしょうか。具体的に言うと、本講義では出席が成績に直結するため、目の前の成績(コミュニケーションペーパー)欲しさにこぞって講義に出席するだけの受講生の方々がいたことです。彼ら彼女らは、講義中に、講義の勉強ではなく、TOEICや簿記などの資格勉強からネットフィックスまで様々な多岐にわたるジャンルに夢中になっていました。それが本人にとってやむを得ない事情というのならば、良いのでしょうが、せっかくの講義を受講したふりをするのはどうなのでしょうか。

 どうすれば映画館でポップコーンを食べずに手元にあるスマートフォンに注目できるのでしょうか?どうすればひどく自然に満ち溢れ、目の前に動物がいるはずの動物園で人間観察だけを行うことが出来るのでしょうか?

 されど多様性のるつぼの中。おおよそ半数の方々は目の前の講義に集中していましたよ。立命館大学では普通である講義風景であると言って差し支えないと思われます。コミュニケーションペーパーを考慮しても、多くの学生が来ており、そのうちの半数ばかしがまじめに講義を受けていたのならば、本講義はかなり評判が良かったということでしょう。

 

・実験について

 それでは話を変えて、これから実験を受ける1回生や2回生の方々へ、せっかくなので実験に関連した話題を提示しておきます。皆さんの多くが講義ではなく、実験に対してどのような認識を持っているか分かりませんが、私から確かに言えることがあります。それは、実験を疎かにしてはいけないということです。それはなぜか。

 実験がまともに出来ない人間は自由の広がる社会へ飛び出したときに、うまく翼を使うことが出来ないからと言えばよいでしょうか (筆者も他者のことを言える立場ではありませんが…)。使った実験道具は元に戻す、資料によく目を通しておく、締め切りを守るなど、物理学に関係ない分野も体験的に学ぶことが出来る貴重な経験、それすなわち実験というわけです。皆さんは舞台を見に行った時に、役者(プレイヤー)が台本(セリフ)以外のシーンでつまずいたり、台本(セリフ)を間違えたりするような品性の欠ける行為を見たこともないし、見たいと思わないことでしょう。つまりはそういうことなのです。あえて、物理学から話をそらし社会的に言えば、実験は礼儀を学ぶ場と言えるでしょう。どうでしょうか。本ページをご覧のあなたが物理にたとえ興味がなくとも、実験に対して意味があるように思えてきたのではないでしょうか。

 それでは、皆さんは教員の方などに、最も注意すべき実験の基本的な心得の内の1つを挙げよと言われた時、初めに何を思い浮かべるでしょうか。無論、考慮すべきことは星の数ほど数多あるわけではあります。その中で、繰り返しになりますが、初心的な心掛けとして、”実験を始める前に配られた資料をよく読んでおく”といったことが挙げられるのではないでしょうか。というのも、実験の大きな指針となるのは資料であります。資料には、実験の目的、原理、実験方法など、多岐にわたる実験の心得が載せられています。どのような革新的なアイデアを思いたとしても、その行為を蔑ろにしてしまっては、正確な実験を行うことが出来ませんから。

・実験道具

  終わりに、興味がある方のために、電磁気学入門で使ったような実験器具のいくつかをを以下に貼っておきます。何かのお役に立てれば。

写真1 いくつかの電気部品で構成された電気回路

・締言

 最後になりますが、今年初めに悪い意味で大きく世間を賑わせたあの「マコモ湯」や「風呂キャンセル界隈」の台頭により、にわかにスピリチュアル量子力学なる分野が注目を浴びたようです。皆さんは物理学の量子力学と前者の量子力学のどちらに惹かれるのでしょうか。よく考えて、勉強の大切さや実験のすばらしさを知る大学期間にする必要があるのではないでしょうか。本ページを読み、考えを改めてくれる方がいれば幸いであります。

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